4月24日(日)のオリックス対ーロッテ戦で、球審の白井審判が佐々木朗希投手に詰め寄るシーンがあった。
このシーンをめぐっては、白井球審が佐々木投手や松川捕手に対して恫喝をしたという指摘が相次ぎ、報道やネット上では物議を醸している。
ヤフーニュース:白井球審、判定不服見せた佐々木朗希へ詰め寄る姿に「当然の注意」「大人気ない」と賛否両論
経緯
先発の佐々木投手は、前々回登板でNPB史上28年ぶりの完全試合、前回登板でも8回までパーフェクトピッチングをしており、たくさんのプロ野球ファンから注目を浴びる試合でした。
トラブルがあったのは2回裏のオリックスの攻撃、2死1塁の場面。
2ストライクからの外角低めへの直球がボール判定となり、佐々木投手は苦笑いを見せマウンドを降り数歩前進しました。
その直後、白井球審が佐々木投手に詰め寄るように声をかけに行きました。
すぐさま捕手の松川選手が間に入り謝罪するような仕草で事なきを得たが、試合後に白井球審が一切コメントをしなかった事から、物議を醸すことに。
ロッテの井口監督は試合後、判定に対しては、なにかを言ってはいけないと思います」としながらも、「球審はもっと冷静にやらないといけない」と苦言を呈した。
問題のシーン
白井審判とは
白井審判とは
- NPB公式審判員(2022年4月現在)
- 1997年2月1日にパシフィック・リーグ審判部に入局。
- ストライクコールが特徴的で、中継でも明確に聞き取れるほどに声が高いことで有名。
- ストライクコールをする際に指で「K」の字を作る。このポーズは自身がファンのAKBの公演を観たことがきっかけと語っている。
白井球審が詰め寄った理由
公認野球規則では次のとおり定められています。
公認野球規則8・02審判員の裁定(a)
「<略>審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレーヤー、監督、コーチ、または控えのプレーヤーが、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない」
「【原注】<略>もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向かってスタートすれば、警告が発せられる。警告にもかかわらず本塁に近づけば、試合から除かれる」
ポイント
白井審判は、本塁に向かってきたように見えた佐々木投手に警告を発するため詰め寄ったものと推定されます。
球界OBのご意見
高木豊 氏(元ベイスターズほか)
高木豊氏コメント
- 白井球審の態度はいけない
- ストライク判定は辛かった
- 審判を味方につけるようなコミュニケーションを
- 佐々木朗希投手は熱いハートの持ち主
槙原寛己氏(元ジャイアンツ)
槙原寛己氏コメント
- 佐々木朗希には「いい教訓」
- 顔や態度に出すと損をする
- 審判にも“なめられたくない”という思いもある。
- 素直な選手と思われれば、少なくとも“損をする”ことはない。
- 国際大会に出たり、MLBに移籍する可能性もある佐々木朗には審判との接し方を学んでほしい
デーブ大久保氏(元西武ライオンズほか)
高木豊氏コメント
- 白井審判はめちゃくちゃまっすぐで昭和の審判
- 審判団は鍛錬を積んでいる叩ぎあげ集団
- 佐々木朗希の行動は判定への抗議と受け取れる
- 審判にも“なめられたくない”という思いもある
- 白井審判だけが悪く言われるのはおかしい
愛甲猛氏(元ロッテほか)
高木豊氏コメント
- 実際はストライク
- まずは審判員の技術向上を
- リクエスト対象にすることも検討が必要
ダルビッシュ投手もコメント
現メジャーリーガーのダルビッシュ投手も、ツイッターなどで次のようにコメントした。
ダルビッシュ投手コメント
- 球審がマウンドに詰め寄るという行動は肯定しない
- 今回のようなことはプロ野球の歴史から多々ある
- 審判はみなさんが思っている何万倍も難しい
審判には説明責任がある
今回の問題について、様々な意見がありますが、中でも重要なのは次の点です。
審判は説明責任を果たしてほしい
今回のように審判にはジャッジへの説明が求められる場合があります。
その際に観客に向けて、なぜその裁定を下したのかを明確に説明する能力が必要になっているのではないでしょうか。
審判の厳格さとは
人間がジャッジする以上、誤審は付き物です。
しかし、今ではリプレー検証など、より正確な判定が可能になった時代、審判の厳格さが損なわれつつあるのも事実です。
先日話題となった高校野球で球審が誤審を認めて謝罪をし、大きな話題を呼びました。
「打球がイレギュラーバウンドでフェア地域に転がりまして、フェアの判定を致しました。しかしながら、二塁の塁審がそれを誤ってファウルのジェスチャーをしてランナーを止めてしまいました。守備は打者走者を一塁でアウトにしようという守備行為でしたので、私たちの間違いです。止めたランナーを二塁に進めて1アウト二塁で再開いたします。大変申し訳ありません」と謝罪し、スタンドから大きな拍手が起こった。
「審判の判定は絶対」とされている中、一度行った判定を覆して謝罪するケースは極めて珍しい。
過ちを認めて潔く謝罪をした尾崎球審のように、審判の厳格さとは、自らの過ちを認め謝罪する潔さの上に成り立つということが示されたプレーでした。
白井球審への過度な批判の背景
視聴者が観たいものとのギャップが大きかった
今回の問題、白井球審の態度は確かに行き過ぎたものがあったと思います。また、試合後に説明をしなかったことが問題だったと思います。
しかしながら、なぜこんなにも大きな問題になってしまったのでしょうか。
報道やSNSでは、白井球審への厳しい意見や批判が飛び交い、「選手へのパワハラだ」や「審判辞めろ」と言う過度な声もあります。
その背景には、私たちが視聴者が観たいものとのギャップが大きかったことが大きな要因だと思われます。
佐々木投手の三振ショーが見たかった
この試合は前々回に完全試合、前回に8回までパーフェクトピッチングと、まさに球界の新しいヒーローとなった佐々木投手への注目が大きく集まった試合でした。
さらに、17イニング連続無安打中という中、どれだけ記録を伸ばすのかも注目されていました。
しかし、先頭のオリックス福田選手にあっさりとヒットを許し、その後も不安定な投球内容で、ファンが期待した内容とは大きく乖離していたと思われます。
そこに、初回からストライク判定が厳しかった白井球審が佐々木投手に詰め寄ったのだから、ファンの注目は一気にこの問題へと傾きました。
野球文化とコンプライアンス
日本のプロ野球界には、現代社会の常識から外れた文化があると思います。
しかし、今回の問題が取り上げられたように、プロ野球の文化は「時代遅れ」になりつつあります。
私たちファンの「見たいもの、見たくないもの」とプロ野球文化とのギャップをどう埋めていくのか、NPBは真剣に考えていかなければなりません。
まとめ
今回は佐々木投手と白井審判のニュースについてまとめました。
このニュースから見えてきたのは、プロ野球文化と私たち視聴者との感覚のズレの大きさです。
審判の裁定は絶対です。しかし、その裁定に疑問が投げかけられたときは、審判自らわかりやすく説明することが求められています。
その一方で、私たち視聴者もプロ野球選手や審判に対して、最低限の敬意が必要だと感じたニュースでした。
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