プロ野球選手として1軍に登録されることを「出場選手登録」と言い、反対にメンバーから外れることを「選手登録抹消」と言います。
この記事では、プロ野球にまつわる「出場選手登録」の基本ルールや、現行制度の課題点について解説します。
この記事でわかること
- 出場選手登録の上限は29人(2022シーズンは31人)
- 抹消された場合は10日間1軍の試合に出られない
- 出場選手登録とベンチ入りは違う
- 選手登録とFA権には大きな関係がある
- 先発投手の登録抹消にはルール整備が必要
出場選手登録の基本ルール
基本ルール
- 登録できる選手数は最大29人(特例により現在は31人)
- そのうち、試合に出場できるのは(いわゆるベンチ入り)試合前に指名された最大25人(特例により現在は26人)
- 外国人選手は最大4人まで(特例により現在は5人)
- 外国人選手のうち、野手、投手共に最大3人まで(特例により現在は4人まで)
- 抹消された日から10日間再登録ができない(例外あり)
- 日本シリーズではこの制度は適用されない(後述)
例外規定
①脳震盪登録抹消特例措置
脳震盪登録抹消特例措置
- プレー中の交錯などで脳震盪を起こし出場選手登録を抹消された場合、10日間経ないで再登録が可能
- この特例により出場選手登録を抹消する場合、代替選手を指定して出場選手登録することができる
- 抹消選手が10日以内に復帰する場合、代替選手が出場選手登録を抹消される
- この代替選手はこの抹消から10日間経過していなくても再度出場選手登録することができる
ポイント
脳震盪で試合に出ることができなくなっても、快復すればすぐに1軍に復帰することができます。
②引退試合選手登録特例措置
引退試合選手登録特例措置
- 引退試合をする選手について、1日限定で出場登録選手の枠を超えて登録が可能
- そのうち、試合に出場できるのは試合前に指名された最大25人(特例により現在は26人登録できる選手の数に制限はないが、試合でベンチ入りできる選手は25人で変わらない
- この登録をされた選手は次の日に自動的に登録抹消となりその後はクライマックスシリーズを含めたリーグ公式戦終了まで登録できなくなる
- 当該試合が中止になった場合は、別日に再び登録できる
- この特例措置を使った選手でも日本選手権シリーズは登録可能
ポイント
引退試合をする選手に配慮したルールです。選手も心置きなく試合に集中できます。
③新型コロナウイルス感染症の流行の影響による特例措置
2020年シーズン(特例2020)
- 出場選手登録数が29人⇒31人に増加
- ベンチ入り選手数が25人⇒26人に増加
- 外国人選手枠が4人以内⇒5人以内に増加(ベンチ入りは4人まで)
- 外国人選手の内、投手と野手のどちらかを4人にした場合は、以後もその内訳を変えることはできない
- 体調不良でコロナ感染の疑いが出て出場登録を抹消されても、検査で陰性となるなどした場合は、10日間を経ずに再登録が可能
ポイント
出場選手登録やベンチ入り人数が増えました。
コロナ感染の疑いで抹消されても、陰性であればすぐに1軍に復帰できます。
2021年シーズン(特例2021)
- 2021年シーズン中に施行され、基本ルールは特例2020と同様
- 外国人選手の内、投手と野手のどちらかを4人に制限した後も、内訳の変更が認められるようになった
- 外国人選手の内、5人全員を野手または投手として登録することはできない
ポイント
外国人投手と野手の内訳が変更できるようになりました。
2022年シーズン(特例2022)
- 特例2021と基本的に変更なし
シーズン別一覧表
2022シーズン | 2021年シーズン | 2020年シーズン | 従来 | |
試合数 | 143試合 | 143試合 | 120試合 | 143試合 |
延長戦 | 12回 | 9回 | 10回 | 12回 |
一軍登録 | 31人 | 31人 | 31人 | 29人 |
一軍ベンチ入り | 26人 | 26人 | 26人 | 25人 |
外国人枠 | 5人 | 5人 | 5人 | 4人 |
外国人枠(ベンチ入り) | 4人 | 4人 | 4人 | 4人 |
日本選手権シリーズの場合
日本選手権シリーズにはこの制度は適用されない。
40人を「出場有資格者選手」として選出し、その中から試合ごとにベンチ入りメンバーを選ぶ方式がとられている。
ベンチ入りとの違い
2022シーズンの場合、出場選手登録31人に対して、ベンチ入りは26人となっています。
5人は文字通りベンチ外の選手で、通常はその試合に登板予定のない先発投手がベンチ入りを外れます。
ポイント
先発投手が中5日や6日で投げるのは、ベンチ外選手の人数と大きな関係があります。
その日に登板した投手は、選手登録を外れると最低10日間は1軍の試合で投げることができませんが、ベンチ外に置くことで短い登板間隔で投げることができます。
先発投手を登録抹消にする理由
調子が良いピッチャーが登録抹消になると、ケガをしたんじゃないかと心配してしまいますが、必ずしもそうではありません。
前述したとおり、出場選手登録を外れると最低10日間は1軍の試合で登板することができませんが、逆を言うと10日待てば登板することが可能です。
1軍で投げられる先発投手が8~9人程度揃えば、中10日で登板することが可能であるため、選手のケガ防止や疲労軽減、そしてベンチ外に控えの野手や中継ぎ投手を置くことができます。
ココがポイント
ベンチ外の選手に野手や中継ぎを置くことで、長い目で見た時に柔軟なチーム編成が可能になります。
選手登録とFA権の課題点
前述した先発投手の登録抹消については課題があります。それはFA(フリーエージェント)権との兼ね合いです。
FA制度とは
FA制度とは、プロ野球選手自らが移籍希望を表明後、オファーをもらった他球団と交渉し、契約を結んで移籍できる制度のことです。
FA権の取得はハードルが高い
FA制度の取得には一定条件をクリアしないといけません。
国内FA | 海外FA | |
---|---|---|
1回目のFA取得日数 | シーズン中に一軍登録された日数145日以上×8シーズン 大学社会人出身者は7シーズン | シーズン中に1軍登録された日数145日以上×9シーズン |
2回目以降のFA取得日数 | 1回目の国内FA権行使後、145日以上の一軍登録×4シーズン |
国内FAの最短取得年数
- 2022年12月に18歳で高卒として入団…2030年シーズン終了後(26歳)にFA権獲得
- 2022年12月に23歳で大卒として入団…2029年シーズン終了後(30歳)にFA権獲得
ポイント
入団から毎シーズンほぼ1軍で選手登録された場合でも、FA権取得には長い年月がかかります。
登録抹消制度の乱用は先発投手のFA権利を奪う
先発投手が登板後にすぐ登録抹消となると、年間を通して先発で登板をしたとしても、1軍選手登録の期間はわずか15試合程度。FA権を取得することは不可能です。
ココがポイント
登録抹消制度の乱用は先発投手のFA権利を奪うことにつながります
まとめ
まとめ
- 出場選手登録の上限は29人(2022シーズンは31人)
- 抹消された場合は10日間1軍の試合に出られない
- 出場選手登録とベンチ入りは違う
- 選手登録とFA権は大きな関係がある
- 先発投手の登録抹消にはルール整備が必要
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